公開日:2021.12.12 最終更新日:2022.06.17 離婚

離婚するときに財産分与は拒否できるのか?

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夫婦が離婚をする際、財産分与をして婚姻期間中に築いた財産を清算します。

財産分与は、「夫婦が共同生活を送る中で形成した財産の公平な分配」を基本としているため、離婚の原因が配偶者にあっても、財産分与を請求されたら公平に分配することになります。

そのため、配偶者から財産分与を請求された場合は、原則として拒否することができません。

ただし、状況によっては財産分与の割合が変わり、分配する金額を抑えられる場合もあります。また、財産の中でも財産分与の対象にならない特有財産もあるので、どれが共有財産にあたるのか確認しておきましょう。

1.財産分与をしなくてもいいケース

財産分与は、配偶者が専業主婦で収入がない場合であっても基本的には請求に応じなければいけません。その場合、夫婦の共有財産は夫が稼いだ財産しかないので、夫のほうが損をしていると感じる人も多いでしょう。

しかし、夫は会社で生活費を稼ぎ、妻は家事や育児をすることで夫を支えたという考えにより、夫の収入も夫婦の共有財産とされ財産分与の対象になります。

ただし、下記の場合は離婚しても財産分与をしなくてよいです。

【財産分与をしなくてもよい場合】

  • 配偶者が財産分与請求権を放棄した
  • 配偶者から財産分与をしないと合意を得られた
  • 離婚成立から2年以上経過している

(1)相手が財産分与を放棄した場合

配偶者が財産分与をしないと意思表示した場合は、財産分与をする必要はありません

人によっては、「はやく離婚したいので財産分与で揉めて関係を長引かせたくない」、「自分に非があるので財産分与を求めない」などの理由で財産分与を破棄することもあります。

ただし、財産分与の放棄は、あくまでも本人の自由な意思で決める必要があります。配偶者に財産分与の放棄を強制することはできません

もし相手が財産分与をしないと言った場合は、心変わりしないうちに離婚条件を公正証書に残しておきましょう。公正証書を作成するには、平日に公証役場へ夫婦二人(代理人可)で行く必要があります。

(2)お互いの合意があれば財産分与を拒否できる

夫婦間の話し合いにより、財産分与をしないことをお互いに合意すれば財産分与をする必要がありません

財産分与を拒否したい場合は、夫婦で協議の場を設け、お互いに納得できるよう意見や財産分与の条件を整理しましょう。財産分与をしたくない理由をきちんと相手に伝えれば、納得してもらえる可能性もあります。

また、財産分与をしないことは配偶者に合意を得られなくても、同居していたマンションやペットは譲るから預貯金は渡さないなど、お互いに妥協できる条件が見つかるかもしれません。

(3)離婚成立から2年以上経過している

財産分与を請求できる除斥期間は、離婚が成立した日から2年以内と民法第768条で定められています。離婚から2年が経過した場合は、家庭裁判所での調停・審判を請求できなくなるため、財産分与をしなければいけない強制力がなくなります。

なお、2年以上が経過しても互いに協議して合意がとれれば財産分与は可能です。

■共有財産を隠していた場合、2年経過後も損害賠償を請求できる可能性がある

離婚時に財産分与の対象となる共有財産を故意に隠した場合、民法第709条、703条により、離婚から2年以上経過しても民事上の不法行為または不当利得として損害賠償請求も考えられます

(4)特有財産だった場合

特有財産は夫婦で築いた財産ではないので、共同財産を夫婦で清算する財産分与の対象とはなりません。特有財産とは、夫婦のそれぞれが単独で得た財産のことです。

【特有財産の例】

  • 結婚前から持っていた預貯金・不動産
  • 嫁入り道具
  • 結婚後に親や親族から相続または贈与された預貯金・不動産
  • 独身時代の借金

反対に、共有財産となるのは婚姻中に夫婦生活で得た以下のものです。
【共有財産の例】

  • 土地や建物などの不動産
  • 自動車
  • 家財道具
  • 電化製品
  • 美術品
  • 有価証券
  • 将来もらう予定の退職金
  • 年金
  • 各種保険金
  • へそくり
  • 子名義財産
  • ゴルフの会員権
  • 株式投資
  • 保険会社の年金積立
  • 会社の社内積立
  • 住宅ローンや借金などの負債

もし共有財産を購入するのに特有財産を利用していた場合、利用した特有財産分の金額を差し引いた金額の共有財産が財産分与の対象となります。

>マンションの財産分与の詳細はこちら

年金や退職金の財産分与の仕組みはこちらをご参考ください。
>離婚するときに行う年金分割について仕組みと申請方法を解説
>退職金の財産分与をしたときにもらえる金額と時期を解説

2.財産を隠してバレなければ財産分与を逃れられる?

財産分与の額を減らすため、離婚前に預金口座から残高を引き出したり、複数の口座を持っているのに1口座しかないなどと共有財産をごまかしたりしても、財産分与の話し合いの際には保有する財産を開示しあう必要があるので隠すことはできません。

高額な引き出しや不審な引き出しが利用明細からわかったり、金融機関からの郵便物などを見られていたりすると財産を隠していることを疑われやすいです。
仮に通帳の開示を拒否しつづけたとしても、配偶者が弁護士会照会や裁判所を通じた調査嘱託を利用すれば金融機関が明細などを開示してしまう場合があります。

(1)離婚の話が出た後で使い込んだらどうなる?

財産を隠すのではなく、離婚の話が出たあとに貯金を使い込んだ場合は、使い込んだ金額も財産分与の対象として考えられる場合があります

多少の趣味などは生活費として考えられますが、普段は行かないような高額なエステサロン通いやブランド品の購入、ギャンブルなど日常生活では必要ないものに高額を使い込んだ場合、「使い込み」と認められるからです。

ただし、日常生活に必要な日用品や家電製品の購入費用、医療費などは生活費として考えられ、使い込みとは断定できません。

(2)財産分与を拒否し続けたらどうなる?

財産分与を拒否しつづけても、配偶者の意思に反して請求権を放棄させることは不可能です。財産分与を拒否しつづけた場合、裁判を起こされたら判決内容によりますが基本的に夫婦の共有財産は2分の1ずつに分配されることになります

離婚後2年以内であれば、財産分与のみの調停を申し立てることも可能のため、配偶者に裁判を持ちかけられる前に早急に離婚して逃げるということもできません。

3.財産分与の割合を抑えるためには何をすればいいのか?

財産分与は裁判所が判断する場合は基本的に2分の1ずつですが、裁判所を通さず夫婦同士で協議し合意する場合、分配する割合は自分たちで任意に決められます。

財産分与で相手に渡す金額をなるべく抑えたいのなら、離婚調停をする前に夫婦間でよく話し合い、自分の希望する条件をのんでもらえるよう説得しましょう。

実際に、配偶者の多額の浪費癖があった場合、財産形成に特有財産が貢献した場合、配偶者の支えのおかげとは言い切れないような特別な才能で多額の財産形成した場合などは、割合が変わった判例もあります。

配偶者が納得しない場合や、ご自身で説明がうまくできない場合は弁護士に相談することをおすすめします。

(1)財産分与のトラブルを防ぐために条件を書面に残す

協議離婚をする場合、財産分与の条件を決めたあとは、相手の気が変わらないうちに条件を「離婚公正証書」や「離婚協議書」などの書面に残しておきましょう

口約束のみだと、トラブルに発展したり、相手が条件を勘違いしており後から掘り返されたりして、調停や裁判を起こされる可能性があります。
また、取り決めた条件を証明する書面がないと、調停などに進むと以前口約束した条件とは異なり、基本に則って2分の1ずつ財産分与をすることになるおそれがあります。

その点、離婚公正証書を作成しておけば、契約外の支払いを求められることを防ぐことができます。さらに、養育費や財産分与などの支払いが滞った場合に差し押さえが可能のため、お金を支払う約束が離婚後に守られる安全性を高めることができ双方にメリットがあります。

ただし、離婚公正証書に支払期日や金額などの明示がなかったり強制履行の記載がなかったりなど条件を満たさない場合は差し押さえができないため、公正証書の内容はよく確認しましょう。

【離婚公正証書作成の流れ】

  1. 協議離婚する際に夫婦で話し合い、養育費や財産分与などの離婚に関する条件を具体的に取り決める
  2. 離婚公正証書に定める内容を夫婦で整理して確定し、公証役場へ事前確認して申し込みに必要な資料を準備する
  3. 公証役場へ行き、契約内容の説明と必要書類を提出し申し込む
  4. 後日、予約した日時に夫婦二人(代理人可能)で公証役場へ行き、契約の手続きを済ませて公正証書を完成させる
  5. 公証役場から提示された公証人手数料の支払いと引き換えに、完成した離婚公正証書を受け取る

なお、「離婚協議書」でも離婚条件を残すことができますが、私的文書のため法的な執行力はありません。

4.財産分与について不明点があれば弁護士に相談する

「配偶者が条件に納得しない」、「どれが財産分与にあたるかわからない」、「財産分与の計算方法が分からない」など離婚協議がスムーズにいかない場合は、弁護士に相談してみましょう。弁護士に相談することで、深い知見や法律面から総合的に助言を得られます。

新小岩法律事務所では初回無料相談を行っているため、費用が心配な方でも気軽に相談していただけます。

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