公開日:2018.07.06 最終更新日:2020.06.12 交通事故

交通事故で被害者が死亡したときの遺族の対応について

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交通事故で大切な人を突然失ったとき、遺族にとっては計り知れないほどの精神的な苦痛を受けるものです。
精神的にひどく落ち込んでいても、事故解決まで真摯に対応し、納得がいく示談金を受け取るべきです。
ここでは、交通事故で被害者が死亡したときに遺族が取るべき適切な対応についてご紹介します。

1.交通事故の被害者が死亡した場合に遺族がやるべきこと

(1)事故の状況の確認

事故の状況を調べるのは警察の仕事ですが、被害者の通夜や葬儀などで加害者と直接会う機会があるなら、本人の言い分も聞いておきましょう。
後になって加害者が被害者に対して事故の原因をなすりつけたり、自らの非を認めなかったりすることがあります。
加害者側の意見の矛盾を防ぐためにも、本人の言い分を録音しておくことをおすすめします。

(2)加害者の身分を確認する

加害者の住所、氏名、連絡先を確認しておきます。
加害者が社会人の場合は名刺をもらっておくと良いでしょう。
なお、社用車などでの移動中または業務中の事故だった場合は、加害者の勤務先に対して損害賠償金を請求できる可能性があるので勤務先と勤務先の電話番号も確認します。

(3)警察としっかり連携をとる

交通事故を起こした加害者は3つの責任を負うとされています。
ひとつは損害賠償責任などの「民事上の責任」、自動車運転過失致死傷などの刑事罰を受ける「刑事上の責任」、免許取り消しなどの行政処分を受ける「行政上の責任」です。
特に、刑事事件と行政事件は警察が主体となって手続きをするため、加害者がどのような処分を受けるのか、どのような手続きが行われているのか、被害者が把握しにくいのが現実です。
そのため、刑事手続きの進み具合、加害者は取調べでどのようなことを主張しているのかを警察と連携を取りながら確認していきましょう。

(4)目撃者や物証の有無を確認

交通事故で被害者が死亡すると、事故が起きたときの状況を証言できるのが加害者しかおらず、被害者遺族にとっては不公平に感じるものです。
そのため、交通死亡事故において目撃者の存在は非常に重要なものとなります。
目撃者がいる場合は、連絡先を聞いて事故の状況を詳しく話してもらえるよう確認してみましょう。
最近では、ドライブレコーダーを搭載した自動車が増えているので、事故の瞬間を映像に残してあるという目撃者の方もいらっしゃるかもしれません。
目撃者がいない場合は、警察に依頼して現場に立て看板を設置してもらうなどします。

(5)加害者が加入している保険の確認

加害者が加入している自動車保険の種類を確認しましょう。
自動車保険には、自動車を所有している人が必ず加入しなければならない自動車損害賠償責任保険と、民間の保険会社が取り扱っていて任意で加入できる任意保険の2種類があります。
事故発生後の示談交渉は、加害者ではなく保険会社と連絡をとることになるので、どこの保険会社と契約しているのかを確認し、保険証書に記載されている証明書番号を控えておきましょう。

(6)被害者または家族が加入している保険

被害者が加入している自動車保険に「弁護士費用特約」が付保されていれば、弁護士費用を保険会社負担で示談交渉や事故に関する手続きを弁護に一任できます。
契約者本人以外に家族の事故にもこの特約が使えるケースもあるので、家族が加入している保険があれば契約内容を確認しましょう。

(7)加害者の刑事処分を書面で受け取る

加害者が刑事手続きで最終的にどのような処分を受けるのか、遺族としては気になるところでしょう。
警察に問い合わせれば教えてもらえますが、わからないことがあったときにしっかり確認できるように電話や口頭ではなく、正式な書面で教えてもらうことをおすすめします。

2.被害者が請求できるもの

(1)入院・治療費(搬送された場合)・付添費等

被害者遺族が病院に支払う実費を請求します。
遺族を経由せず、保険会社が病院に直接支払わるのが普通で、被害者側と保険会社と金額や意見が食い違うことはほとんどありません。

(2)葬儀関連費

通夜、葬儀、仏壇・仏具購入費、墓碑建立費など被害者が死亡したときにかかった一連の葬祭関連費を保険会社に負担してもらいます。
ただし、負担してもらう金額は原則として150万円までという上限があるので注意が必要です。

(3)休業損害費

休業損害は、被害者が交通事故で負傷し、働くことができず収入を失ったことによる損害のことです。
事故前の基礎収入額と休業期間をもとに算出します。
死亡事故の場合、事故の被害に遭ってから死亡の診断を受けた日までの日数を休業損害として請求できます。

(4)家族のかけつけ費用

被害者死亡、または重篤な症状の場合は、遠方からの駆けつけ費、宿泊費等も認められることがあります。
海外からの渡航費用が認められた例や、入院している家族を見舞いに行くために要した交通費、ガソリン代等も損害として認められた裁判例もあるので、これらの領収書等は必ず残しておくことをおすすめします。

(5)被害者本人の慰謝料及び家族の慰謝料

被害者本人が突然事故で命を奪われたことに対する「被害者本人の慰謝料」と、大切な人を事故で失った遺族の精神的苦痛に対する「遺族固有の慰謝料」を請求できます。
なお、被害者本人に対する慰謝料は遺族が相続するため、一般的に支払われる慰謝料には被害者本人と遺族固有の慰謝料の両方が含まれています。

(6)被害者本人の慰謝料及び家族の慰謝料

事故で死亡しなければ、仕事を続けて本来得られるはずだった収入や利益を、事故によって逸したことを「逸失利益」と言います。
事故前の収入と就労可能年数を考慮して算出されます。

3.遺族がやってはいけないこと

(1)警察の事情聴取に適当に答えない

警察からの事情聴取には冷静かつ誠実に対応します。
遺族の証言によって、過失割合や加害者の刑事処分に影響を及ぼしかねません。
交通事故における刑事処分は被害者が想定している以上に軽いものです。
警察には「適正な処罰を望みます」と伝えることが大切です。

(2)保険会社と安易に示談しない

保険会社から提示される慰謝料等の金額は、低く設定されていることがほとんどです。
早期の解決を望むあまり安易に示談に応じるのはおすすめできません。
必ず弁護士に相談して、保険会社から提示された示談金が妥当な金額かどうかを確認しましょう。

(3)賠償額について、相続人同士で意見が分かれたときは

案件にもよりますが、死亡事故の賠償額は総額で数千万円にのぼることもあります。
遺族が複数いるときに、その分配をめぐって相続人同士でトラブルが起こる可能性もあるでしょう。
そのようなときでも、弁護士の見解を聞き、 相続分割を考慮しながら話し合いを進めることで、相続人同士のトラブルを回避できます。

まとめ

死亡事故の場合は、被害者の精神的苦痛が大きく、つい面倒な手続きや警察や保険会社とのやりとりを後回しにしがちです。
しかし、時間が経ってしまうと、取り返しがつかなくなることもあるので、早めに弁護士に相談するようにしてください。
弁護士のアドバイスを聞きながら、ひとつずつ解決していくようにしましょう。
遺族のその後の生活にも影響するので、慎重な対処が必要です。