公開日:2020.06.28 最終更新日:2022.02.27 交通事故

交通事故の後遺障害(後遺症)に対して請求できる慰謝料について

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交通事故の被害に遭うと、後に後遺障害(後遺症)に悩まされることも少なくありません。もし、後遺障害によって交通事故に遭う前と同じ生活が送れなくなった場合、治療費とは別に慰謝料や逸失利益を加害者に請求することできます。

そこで今回は、交通事故が原因で後遺障害が残った場合に加害者へ請求できる「慰謝料」について解説していきます。

後遺障害によって加害者へ請求できる慰謝料は、請求する方法によって金額が変わるため、どのような方法で慰謝料を請求すれば金額が多くなるのか確認しておきましょう

1.後遺障害とは?

後遺障害とは、交通事故によるけがが原因で、体を自由に動かせなくなったり、神経系の障害が残ってしまったりする「後遺症」のことをいいます。後遺症の中でも一定の症状があれば後遺障害と認定され慰謝料を増額させ、適切な賠償金を受けることができます

ここで注意していただきたいのは「後遺症」が残った人が全員「後遺障害」として認定されるわけではないということです。たとえ後遺症が残っていても、症状が軽微なものは、後遺障害として認定されないこともあります

(1)医師から「症状固定」と診断された時点で症状が確定する

「症状固定」とは、傷病の症状が安定し、医学上一般的に承認された治療方法によって治療を継続しても効果を期待できない状態、あるいは治療の経過によって到達した最終の状態を言います。
つまり、交通事故で負傷した後、治療の為に通院を続けても症状が改善せず、これ以上治療を続けていても完治する見込みがないと医師から判断されると、後遺症が残ったとみなされます。

(2)医師の診断がなければ認定されない

保険会社が支払うけがの治療費は、治療開始から後遺症の「症状固定」までの治療費で、症状固定後に発生した医療費は原則として自己負担となります。また、交通事故により後遺障害が残った場合でも、医師の診断を受けていなければ慰謝料を請求することができません。
そのため、交通事故の被害に遭った場合、必ず医師の診断を受けましょう。

2.後遺障害等級によって請求できる慰謝料の金額が変わる

交通事故が原因で後遺障害が残った場合、後遺障害等級に応じた慰謝料を加害者に請求できます。後遺障害等級とは、後遺障害の症状によって認定される等級です。1級から14級まで分かれていて、最も重い後遺障害だと1級が認定されます。

たとえば、交通事故が原因の後遺障害で「むちうち症」になった場合、症状によって14級か12級に認定されることがあります。また、交通事故により両目を失明した場合などでは、1級に認定されることがあります。

後遺障害等級が認定されるのは、医師から「症状固定」の診断を受けた後です。症状固定の診断を受けた後は、後遺障害等級の認定を受けるための手続きがありますが、加害者側の保険会社が行ってくれる「事前認定」手続と、被害者が自分で行う「被害者請求」手続の2種類の方法があります。

(1) 事前認定(加害者の保険会社による申請)

事前認定とは、加害者が加入する任意保険会社が後遺障害等級の認定手続きを進めてくれる方法です。やり方は、医師に作成してもらった後遺症診断書を保険会社に郵送するだけでとても簡単です。

体の自由がきかない、身動きが取りにくいなどの理由で保険会社に任せたい方にとっては事前認定が楽になります。

認定結果は保険会社を通じて被害者に通知されますが、一連の手続きが賠償金を支払う保険会社主導で行われるため、被害者にとって有利な資料を積極的に用意してもらえない可能性があります。

そればかりか、保険会社にとって有利な資料を作成されてしまい、想定より低い等級認定をされるか、等級認定されないというケースも珍しくありません。

保険会社の都合で申請を進めていくために、認定を急ぐあまり通院時間を短縮するよう一方的に通達され、治療の途中で治療費の支払いを打ち切られてしまうこともあります。

(2)被害者請求(被害者が直接請求する)

「被害者請求」は、被害者自身で医療機関からCT、MRI、レントゲン写真などの資料を貸し出してもらい、自賠責保険会社に後遺障害診断書を提出することで後遺障害等級の認定を受けられる方法です。被害者請求の場合、請求の結果は被害者本人に届きます。

保険会社主導ではなく、すべて自分で手続きを行うので自分にとって有利な資料を用意でき、適切な後遺障害等級の認定を受けられる可能性が高くなります。
後遺障害等級の認定に必要な書類はとても多く、一人ですべての資料を集めるのに手間がかかりますが、交通事故に強みを持つ弁護士と相談しながら手続きを進めて行けば、被害者請求でも自分で手続きすることは可能です

手続きが煩雑ではありますが、適切な等級認定を受けるためにも、被害者請求で後遺障害の等級認定を受けることをおすすめします。

3.加害者に請求できる慰謝料の金額には3つの基準がある

後遺障害等級に応じて加害者に請求できる慰謝料には、「自賠責保険基準」「任意保険基準」「裁判基準」と3つの基準が設けられており、それぞれ金額が異なります。

【後遺障害等級ごとに請求できる慰謝料の比較】

等級 自賠責保険基準 任意保険基準 裁判基準(弁護士基準)
1級 1,150万円 保険会社によって異なる  2,800万
2級 998万円  2,370万
3級 861万円  1,990万
4級 737万円  1,670万
5級 618万円  1,400万
6級 512万円  1,180万
7級 419万円  1,000万
8級 331万円  830万
9級 249万円  690万
10級 190万円  550万
11級 136万円  420万
12級 94万円  290万
13級 57万円  180万
14級 32万円  110万

引用元:民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準2020年版
※自賠責基準は令和2年4月1日以降の事故に適用されるものを記載しています。

自賠責保険基準以外は、保険会社や依頼する弁護士によって異なるため、金額は目安です。ただし、いずれの等級に認定された場合でも、裁判基準で請求したほうがもらえる慰謝料が高くなるケースが多いです。

そのため、交通事故の加害者に後遺障害の慰謝料を請求するなら、「裁判基準」を適用することで、多くの慰謝料を受け取れる可能性があります。

(1)自賠責保険基準

自賠責保険基準は、加害者が加入している自賠責保険から支払われる慰謝料の基準です。後遺障害に対する慰謝料は、まず加害者の自賠責保険から基準に応じた金額が支払われます。自賠責保険基準は、法律で定められているため、後遺障害等級に応じた慰謝料が変動することはありません。

ただし、自賠責保険基準は、3つの基準の中で一番低い金額が定められているため、自賠責保険だけでは後遺障害の慰謝料をすべてまかなえない場合が多いです。

そのため、加害者に請求する慰謝料の金額が自賠責保険基準を超える場合は、加害者が加入している任意保険から支払われます。

なお、交通事故の加害者が任意保険に加入していなかった場合は、自賠責保険基準を超えた分の慰謝料を加害者に直接請求します。

(2)任意保険基準

後遺障害の慰謝料が自賠責保険基準を超えた場合に適用されるのが任意保険基準です

任意保険基準が適用されると、自賠責保険基準を超えた分の慰謝料が支払われるため、自賠責保険基準よりも多くの慰謝料をもらうことができます。ただし、任意保険基準は、保険会社によって異なり、さらに外部には公開していないため、明確な基準を知ることはできません。

また、保険会社は営利を目的とした企業なので、示談交渉の際、慰謝料の支払いをなるべく抑えようとしてきます。そのため、任意保険基準でもられる慰謝料の金額は、自賠責保険基準より増えることが多いですが、希望額よりも少なくなってしまうことがあります。

(3)裁判基準

裁判基準は、過去に行われた交通事故に関する裁判の裁判例をもとに設定された基準です。弁護士が加害者に慰謝料を請求するときにも裁判基準をもとにするため、弁護士基準と呼ばれることもあります。裁判基準は、3つの基準の中で金額が最も高く、かつ過去の裁判例に基づいているため信頼性のある基準です。

そのため、加害者側の保険会社から提示された慰謝料が、「自賠責保険基準」に近い「任意保険基準」であっても、「裁判基準」で示談交渉すれば、さらに多くの慰謝料がもらえる可能性があります。

ただし、裁判基準は、あくまで保険会社との示談交渉をするための基準なので、後遺障害等級によって決まった慰謝料が必ずもらえるわけではありません。示談交渉によっては、慰謝料が変動することがあります。

また、裁判基準で加害者側の保険会社と示談交渉をするためには、法律の知識が必要になります。そのため、個人で交渉しても希望の慰謝料をもらえないおそれがあるため、裁判所基準の慰謝料をもらうなら弁護士に依頼しましょう。

4.示談成立後に後遺障害が悪化したときの対策をしておく

交通事故の後遺障害は、時間が経過した後に悪化することや、新たな症状がでてくることがあります。ただし、一度示談が成立してしまうと、加害者に改めて慰謝料を請求するのは容易ではありません。そのため、示談の際、後遺障害の悪化や新たに後遺障害が認定された場合には、改めて協議するなどの条件を取り決めておくなどの対策が必要です。

5.慰謝料を加害者に請求できる期限

交通事故の後遺障害に対する慰謝料は、請求できる期限が決まっています。慰謝料の請求期限は、令和2年4月1日以降では、物損事故3年、人身事故の場合は5年です。また、令和2年3月31日以前の事故では、物損事故、人身事故とも3年が期限です。

請求期限が過ぎてしまうと時効が完成するため、慰謝料を請求することができなくなります。ただし、時効を気にしすぎてしまうと、示談の成立を焦ってしまい、加害者側に有利な条件で示談を成立させられてしまうおそれがあります。

そのため、示談交渉を時効が完成する前に、なるべく有利な条件で成立させたいなら弁護士に依頼することをおすすめします。

6.後遺障害の慰謝料請求は弁護士に相談する

後遺障害に対する慰謝料を加害者へ請求する場合は、弁護士に依頼することで金額がさらに上がる可能性があります。そのため、後遺障害が認定された場合は、加害者側の保険会社と個人で示談交渉をせず弁護士に依頼しましょう。

弁護士に依頼するのは、交通事故に遭ってからなるべく早いタイミングが良いですが、費用や手続きなどに不安がある人は、まずは無料相談を利用することをおすすめします。

新小岩法律事務所では、予約により平日20:00開始の無料相談も行っております。当事務所は新小岩駅南口徒歩1分の場所にありますので、小岩、新小岩、平井、亀戸、錦糸町など、総武線沿線の地域にお住まいの方は、仕事帰りにぜひご活用ください。当事務所では、上記の地域だけでなく市川、船橋や松戸の方からもご相談をいただいております。

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