公開日:2020.05.12 最終更新日:2020.06.11 債務整理

自己破産手続で免責不許可になってしまう行為

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自己破産は借金の支払いが免除される債務整理です。自己破産をすることで、債権者からの取り立てや返済に追われることがなくなるため、生活の立て直しがしやすくなります。ただし、自己破産をした場合、必ずしも借金が免除されるわけではありません。借金が免除されるためには、裁判所に免責許可を受ける必要がありますが、免責不許可になることもあります。

免責不許可決定は、どのような場合になってしまうのでしょうか。ここでは、免責不許可になる行為と、免責不許可になった場合の対策について解説します。

1.免責不許可になると借金は免除されない

免責不許可とは、自己破産手続が終わった後に、裁判所から免責許可を受けられなかったことをいいます。借金は、破産手続の後に行われる免責手続で、裁判所から免責許可決定を受けたときに免除されます。破産手続が終わっただけでは借金の返済義務は無くなりません。

また、免責許可決定は、免責手続の結果によって受けられない場合があります。破産手続中に、免責を受ける資格がないと裁判所に判断されると、免責不許可決定となり借金の支払い義務は無くならないのです。

そのため、自己破産をして借金を免除されるためには、免責不許可になる原因を無くしておかなければいけません。では、裁判所から免責不許可決定を受けてしまうのは、どのような原因が考えられるのか確認しておきましょう。

破産手続の手順については「自己破産をするための手順」のコラム記事をご参考にしてください。

2.免責不許可事由に該当する行為

裁判所から免責不許可決定を受けてしまう原因は、破産者が「免責不許可事由」に該当していることが考えられます。

免責不許可事由とは、破産法252条1項で定められている、免責が不許可になる原因のことです。破産手続や免責手続の際、免責不許可事由に該当していなければ、免責許可決定を受けられる可能性が高くなります。
免責不許可事由に該当する可能性のある代表的な例をご紹介します。

(1)財産を隠す

自己破産による財産の没収を逃れるために、隠したり売却したりする行為は、免責不許可事由に該当します。破産手続を裁判所に申立てるときには、破産者が所有している一定の価値がある財産を記載した「財産目録」を裁判所に提出します。財産目録に記載された財産は、没収され、現金に換えられてから債権者へ平等に分配されます。

財産目録は自己申告なので、意図的に記載しないこともできます。しかし、破産手続中には、財産目録に漏れがないかなど、破産者の財産を管理する破産管財人が入念に調査をするため、隠し通すことは難しいでしょう。もし、財産を意図的に隠していることが発覚すれば、免責許可を受けられないだけでなく、詐欺破産罪という罪に問われることもあるので絶対にやめましょう。

また、自己破産手続をする前であっても、親族の口座へ預貯金の送金をしたり、不動産の名義変更を行ったりすると、免責不許可事由に該当することがあるため、心配な人は弁護士に相談しましょう。

(2)財産を壊す

不動産や自動車など、換価の対象になりやすい財産を意図的に壊して価値を下げる行為は、免責不許可事由に該当します。財産を壊したのが意図的であったかどうかは、財産管財人の調査で判断されます。

もし、意図的であったと判断されると、財産を隠した場合と同様、免責が受けられないだけでなく、詐欺破産罪に問われるおそれがあります。

(3)新たに借金をする

破産手続をすることを隠したり、自身の経済状況をごまかしたりして新たに借金をした場合、免責不許可事由に該当します。破産法第252条を確認すると、免責不許可事由に該当するのは、破産手続の申立てをした日の1年前から破産手続開始が決定された日までの期間です。

この期間内に、破産手続きをしなければ借金の返済ができないような経済状況にもかかわらず、嘘をついて新たなに借入を行った場合や、クレジットカードで買い物をすると免責不許可事由に該当することがあります。

なお、弁護士に破産手続きを依頼すると、すぐに債権者へ受任通知を送ります。受任通知が送られると、債権者への返済を一旦止めることができるので、返済分の金額を生活費にあてることができます。

(4)クレジットカードの現金化を行う

クレジットカードの現金化とは、クレジットカードを使って購入した商品を売却し現金を得る方法です。たとえば、所持しているクレジットカードで新幹線の切符やギフトカードなどを購入して、金券ショップなどで売却して現金を得るという方法が該当します。

破産手続の調査では、クレジットカードの利用履歴も調査されます。もし、クレジットカード現金化を行ったことが判明すれば免責不許可事由になり免責が認められないことがあります。

(5)特定の債権者だけ借金を返済する

自己破産を弁護士に依頼すると、取り立てを止めるために債権者へ受任通知を送ります。この受任通知を送った後に、特定の債権者に返済を行ってしまうと、その返済の目的や経緯によっては免責不許可事由に該当することがあります。これは、偏頗弁済(へんぱべんさい)と呼ばれています。

自己破産は、債権者への弁済が平等に行われるため、親族からの借金だけは返済を続けるなどの行為があれば偏波弁済になるため、免責が受けられないことがあります。

(6)借金の原因が浪費やギャンブル

借金を作った原因が、娯楽費や必要以上の買い物などの浪費によるものだと免責不許可になることがあります。飲食や衣服などの消費は生活をするうえで必要なことですが、度を越えた娯楽などで消費すると、免責許可決定が受けられないと判断されることもあります。

また、競馬、パチンコ、株、宝くじなど、ギャンブル性の高い射幸行為(しゃこうこうい)が原因で借金を作った場合も免責不許可事由に該当します。さらに、ギャンブルだけでなく、株、先物取引、FX取引も射幸行為(しゃこうこうい)に該当するため免責が受けられないことがあります。

破産手続の調査では、世帯の家計も調査されるため、借金を作った原因が浪費やギャンブルであることを隠してもばれてしまいます。ただし、借金が免除された後に生活が改善できると判断されれば、免責を受けられる可能性があるため、依頼する弁護士や裁判所へは正直に伝えましょう。

(7)書類を偽装する

自己破産手続に必要な書類を偽造した場合、免責不許可事由に該当します。自己破産手続をする場合、財産目録以外にも、家計簿などの帳簿や債権者名簿などの提出も求められます。

それらの書類を偽造するなどして裁判所に提出した場合には免責が認められません。また、書類を偽造すれば、破産詐欺罪に問われるおそれもあります。

(8)裁判所への説明を拒む

破産手続では、裁判所が破産者の借金を免除するべきかを判断するため、書類だけだと不明な部分について破産者に説明を求めることがあります。その際、回答の拒絶や、虚偽の内容を説明した場合、免責不許可事由に該当することがあります。免責許可決定を受けようとして、事実と異なる内容を説明しても、提出書類や調査内容と相違が生じれば免責が認められないおそれがあるため、事実を正直に伝えるようにしましょう。

(9)破産管財人の業務を妨害する

破産管財人の業務を妨害する行為をすると、免責不許可事由に該当するため免責が受けられないことがあります。破産管財人は、破産者の財産を管理し、現金に換えて債権者に分配します。その際、財産を破産管財人に引き渡さないといった行為をすると、免責許可を受けるまでの期間が長くなるだけでなく、借金が免除されないおそれがあります。

(10)7年以内に免責許可決定を受けている

自己破産による借金の免除は、一生に一度だけというわけではありません。一定期間が空いていれば免責を受けることができます。しかし、免責許可決定を受けてから、7年以内の人は、免責不許可事由に該当するため、自己破産手続をしても免責が受けられません。

3.免責不許可事由に該当した場合の対策

免責許可決定は、免責不許可事由に該当していると、絶対に受けられないとは限りません。免責不許可事由に該当している場合でも、裁判所が破産者の事情を考慮して免責許可決定をする「裁量免責」が認められる場合があります。

裁量免責を認めてもらうには、免責不許可事由に該当している場合でも、事実を偽らずに説明すること、そして調査や手続きに協力的であることが大切です。また、自己破産によって免責を受けた後に経済的な更生ができることを裁判所に理解してもらえる必要があります。

ただし、免責不許可事由によっては裁量免責が認められない場合があるため、その他の方法を検討する必要があります。

(1)不服申立てを行う

免責不許可決定を受けた場合、裁判所の決定に対して不服申立ができます。不服申立てをすることで、免責不許可決定を出した地方裁判所ではなく、高等裁判所に審査を請求できます。不服申立をして、高等裁判所で免責許可決定を受けることができれば、借金が免除されます。

ただし、不服申立てができるのは、免責許可決定がされてから2週間以内です。それ以降は、申立てをすることができなくなります。

(2)個人再生をする

裁判所から免責不許可決定を受けた場合、自己破産ではなく個人再生に切り替えて借金の負担を減らす方法があります。個人再生とは、債権者と話し合いをして、借金額を減らせることや、返済期間を延ばしてもらうことができる債務整理です。

また、個人再生であれば、借金を作った原因に関係なく手続きをすることができます。ただし、個人再生ができるのは、安定した収入がある場合のみです。仕事に就いておらず収入が無い人は個人再生をすることができません。

4.自己破産をする前に弁護士に相談する

自己破産による免責許可は、免責不許可事由に該当しているからといって絶対に受けられないという訳ではありません。自己破産に至る経緯や、生活を立て直す意思が伝われば免責が認められる可能性は十分にあります。

ただし、自己破産手続を行うには専門的な知識が必要になるため、弁護士に依頼することをおすすめします。

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